俺は路上で生きていく

路上での一人芝居のみで生計を立てる路上役者のブログ

一人で出来たことなんて何一つなかった

 

昨日、最近歌のレッスンに通い始めたという若い男性に出会いました。

 

彼は、

「僕は、歌の技術もないし、あなたのように路上に立つ勇気もない」

と、言っていました。

 

でも僕は思うんですよね。

技術がないことは行動しない理由にはならないって。

 

だから、

「そんなん俺だって、技術ないよ!今でもそうだし、路上を始めたときなんて、今よりもっと下手だったよ!」

と、返しました。

 

昨日だって、芝居中に

「なんか面白そうじゃね…?」と言いながら、立ち止まった男性2人組が、5秒後には「つまんねえな」と言って、去っていった。

 

そもそも、技術ってなんだろう。

芝居や歌の「上手い・下手」はもちろんあるし、めちゃくちゃ重要だけど、それが一番ではない。

 

演劇界にいると、どうしても「上手い人」がパワーを持つ。

上手くなければ認められないし、上手くなければ地位を築けないし、下手くそは肩身の狭い想いをする。

 

実力の世界なんだから、そりゃそうだ。当たり前。

 

でも、打率やホームラン数、ゴール数とかアシスト数が数字で明確に出るスポーツと違って、芝居や歌などの表現は上手い/下手の境界線は人によってかなり違う。

 

「つまんねんな」と言われて5秒で見限られた僕は、その10分後に涙ぐみながら「あなた、お芝居上手じゃん…!」という感想をいただいた。

 

僕は、自分の技術はまだまだ未熟だと思っている。

路上を始めた6年前は、確実に今よりもっと技術は低いし、自信もなかった。

 

でも、「技術がついてきた」と思うタイミングっていつだろうか?

「技術がない」と感じるタイミングがあるのなら、「技術がある」と思えるタイミングもあるのだろうか?

 

僕は、おそらくないと思う。

 

一生勉強は続くし、続けなきゃいけない。

一生技術を磨き続けなければいけないということは、一生「技術がある」と思えるタイミングなんてこない。

 

だから、技術不足を理由にしてたら、一生何もできないと思ったので、技術不足を百も承知で路上を始めることにしました。

 

それに、僕には勇気もなかった。

 

この動画を見て猛烈に心を動かされたので、人生で初めての路上ライブは新宿駅南口でやると決めていた。

【路上LIVE】「Pellicule」by 不可思議/wonderboy - YouTube

 

自作のコントを作り、セリフを覚え、稽古を重ねて、3ヶ月くらいかけて準備した。

看板や音楽を流すためのスピーカーなども用意し、万全の準備を整えて新宿駅に行った。

 

けど、出来なかった。

必死に作って覚えてきたセリフは一言も出てこなかったし、そもそも作ってきた看板を出すことさえ出来なかった。

 

理由は、ただただ怖かったから。

 

準備万端、あとは始めるだけの僕は、結局3時間もの間、新宿駅の南口に立ち尽くしているだけだった。

 

そして、リベンジを期した翌日2日目。

僕はまた3時間、新宿駅南口に立ち尽くした。

 

もう一人じゃできないと悟った僕は3日目、当時の彼女(今の奥さん)にサクラを頼んで付いてきてもらった。

知り合いの目を、やらなきゃいけないという強制力に変えて、踏み出せない自分のケツを叩いてもらおうと思った。

 

けど、また僕は立ち尽くしていた。

書いてて、笑えてきた。

 

なにしとんねん。

はよ始めろ(笑)

 

ただ付いてきてもらっただけになってしまった僕は、あまりの自分の意気地のなさと情けなさ、付いてきてもらった申し訳なさに涙が出てきた。

 

書いてきて、笑えてきた。

泣く暇あったら、とっとと始めろ(笑)

 

そして4日目、またサクラを頼んで付いてきてもらった僕は、看板を広げず、音楽も流さず、当初の自分の想定を下回る形ではあったけど、何とか1回だけ考えてきたコントを演じることができた。

 

こんなヤツ、勇気があるなんてとても言えない。

 

考えてみると、僕はただの1度だって自分一人の力で踏み出せたことがない。

 

路上を始めるずっと前の25歳のとき、役者と言いつつ、役者の仕事が1年に1回ぐらいしかなかったとき。

 

「このままじゃダメだ。何かを変えなければ」と思って、無銭旅をした。

お金も携帯も持たずに、東京からヒッチハイク屋久島を目指す無銭旅。

 

このときも、準備万端なのに2日間怖くて出発できず、結局先輩に「俺、明日こそ出発しますからね!本当に出発しますからね!」と、怯える子犬のようにワンワン連絡し、自分に強制力を持たせて、ようやく出発できた。

 

居酒屋でテーブルを回ってひとり芝居を披露する”流し”の仕事だって、路上で出会った方が知り合いの居酒屋を紹介してくれたことで実現した。

 

今年、念願だった劇団ノーティーボーイズという劇団の芝居に出れたけど、そのときもお世話になっている衣装さんに、クヨクヨしながら相談した。

 

本当は、色々一人で進めたい。

だって、そのほうがカッコいいじゃん(笑)

 

テレビや動画のインタビューで、武勇伝を語っている成功者のように、「俺は自分の頭で考えて、自分の力で道を切り拓いてきたぜ」的なこと言いたい!(笑)

 

でも、もう33歳。

ここまできて結果を出せてないという事実が、自分にそこまでの能力がないと言うことの何よりの証。

 

そして、思い返せば僕は、自分一人の力で出来たこと、始められたことなんて何一つなかった。

 

でも、思う。

「技術がない」は行動しない理由にならないし、「勇気がない」は他人にすがってケツを叩いてもらえばいい。

 

僕は、技術も勇気もないけど、毎日必死にベストを尽くして技術をつけるために試行錯誤してるし、色んな人にすがることで少しは勇気もついてきたと思う。

 

でも、これからも一人じゃ無理だと思ったときは、強がって一人で解決できないと思ったときには、他人にすがり甘えまくり、大いに力を貸して頂きながら進んでいきたいと思います!!

 

一人で出来たことなんて何一つなかった

 

 

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