「これ絶対面白いでしょう!」
十条で出会ったご夫婦が、芝居を始める前にタイトルを見てこう言ってくれた。
これはもう、完全な勝ちパターン。
だと思った。
芝居が終わった後の反応は、決して良いとは言えない、苦笑いに近いようなリアクションだった。
一番悔しい反応だ。
なんの言い訳もできない、完全な実力不足とわかる反応。
親にとって、自分の娘や息子のピアノの発表会は、世界トップクラスのショーにも勝るエンタメになるように、「面白い」というのは、「心の距離感×クオリティ」という掛け算だと思う。
いくらクオリティが高く、面白い芝居だったとしても、心の距離感がもはやマイナスの憎たらしい奴が作った芝居ならば、「面白い」なんて思えない。
だから僕は、路上ではまず雑談したり丁寧に自己紹介したりして、少しでも心の距離感を縮めてから芝居を観てもらうようにしてる。
僕の第一印象はほとんど、「路上で変なことやってる怪しい人」なので、警戒心を和らげてもらえないと、芝居が「面白い」という評価を得られる可能性が低くなってしまう。
でも、十条で会った「これ絶対面白いでしょう!」と最初に言ってくれたご夫婦は違った。
二人で自ら僕に近づいてきてくれたし、自己紹介も興味深そうに聞いてくれたし、芝居もしっかり観てくれた。
その結果が、ほぼ苦笑い。
悔しい。
悔しさしかない。
心の距離は、むしろ向こうから縮めてきてくれたのに、満足感を与えられなかった。
完全なクオリティ不足であり、実力不足。
路上には、本当に色んな人がいる。
立ち止まってくれたのに、何を話しかけても無言を貫く人がいたり、ソーシャルディスタンスの3倍くらいの距離をとって観ようとする、心の距離どころか物理的な距離が遠すぎる人がいたりなど、本当にさまざま。
心の距離感がゼロ、むしろマイナスの人もたくさんいる。
こういう人に対しては、芝居の反応が悪かったとしても、芝居自体というより、心の距離感を詰め切れなかった部分の反省が大きくなる。
「面白さ=心の距離感×クオリティ」と考えると、心の距離感が遠すぎてしまうと、その時点で楽しませるのはかなりムズい。
でも今回は、十二分なほどに心の距離感が詰まった状態。
まさに、なんの言い訳もできない完全敗北。
あぁ。
本当に悔しい。
このご夫婦が去った後、僕は一人で「あぁ、悔しい」と何回も言っていた。
すると、そのご夫婦が戻ってくれた。
「寒いから、これ飲んで温まって。頑張ってね」
優しさが、心の傷に沁みる…
また一つ努力する理由ができた。
成長して、いつかまたあなた方に観てもらえた時に、今度こそ楽しんでもらえるように日々を過ごしていきます。
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12月17日、十条。
雨。寒い。
めちゃくちゃ寒い!
前に十条に来たときは、2時間やって0組だったけど、今回は3時間で7組観てもらえた。
たった一人で観てくれた演劇部の女子高生や「トイレ行きたいから!」とめちゃくちゃ急かしながらも観てくれたお兄さん(笑)、もう完全に友達になった十条商店街でお店やってるショウコさん。
そして、「学生でお金ないので、100点の面白さでも120円しか出せまんせんが観たいです!」と言いながら、「えー!!めちゃくちゃ面白かったです!!」と、最終的に220円出してくれた学生さん。
皆さん、ありがとうございました!
観てくれる方がいるおかげで、また頑張ろう、今日も頑張ろうと思えます。
また観にいきたいと思ってもらえるように、もっと極めます!
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