俺は路上で生きていく

路上での一人芝居のみで生計を立てる路上役者のブログ

下手くそとかまじ関係ねえ!ー下手くそだけどめちゃくそ感動した、16歳の少女との出会いー

俺、下手くそに猛烈に感動したことが一回だけあって。

それは、愛媛の松山での出来事だったんだけど。

 

当時俺は、”路上芝居どこでもやる企画”を実施していて、

ツイッターで16歳の高校生から、「松山に来て!」って誘いを受けたから、松山で路上芝居をする予定だったのね。

その依頼主の彼女が歌手志望だったから、「じゃあせっかくだから一緒に路上ライブをしよう」ってなって。

ちなみに、彼女にとってそれは人生初の路上ライブ。

 

当日。最初の一組が止まってくれた。

俺はいつもの感じで、一人芝居を披露して、その後彼女の路上ライブを一曲だけ見てもらったの。

 

そこで、俺は人生で一番、歌で感動したんだよね。

 

正直に言うと、間違いなく彼女は下手だった。

 

素人の俺から見ても、声は小さいし、音程はズれているし、ギターも止まる、といった調子だったから。

 

でも、めちゃくちゃ必死なんだよ。

手をブルブル震わせて、声まで震わせながら、一生懸命歌う彼女の姿に、俺は猛烈に感動した。

 

うーーーわ、すっげーなぁって。

 

すごい美しかった。

泥臭いんだけど、美しかった。

必死さってにじみ出ると、こんなに美しいんだなぁって思った。

 

表現してるわけではないんだよね。

だって彼女に聞いたら、「必死さだけは伝えようと頑張りました」とか言うはずないんだから。

明らかに「何かを表現しよう」という余裕はなかった。

 

だから表現ではなく、表出といった方が近いのかもしれない。

下手くそだからこそ、出てきたもの。

出そうとしたのではなく、出てきたもの。

 

もし、彼女がこれから2年3年続けていったら、この必死さは、たとえ意図しても出せるものじゃなくなる。

上手くなって、慣れてきて、余裕が出てきたら、絶対出せない。

出そうとしても出せない。出てこない。

おそらくそういうもの。

 

でも、俺は彼女の姿にめちゃめちゃ感動した。伝わってきた。

他のどんな上手い歌手よりも感動した。

 

それって、表現者としては最高のことだと思うんだよね。

だって、上手いから伝わるってわけじゃないから。

 

現に上手い人なんて、そこら中にウジャウジャいる。

でも、その上手い人みんなに感動するわけじゃないじゃん。

「あー、あの人上手いなぁ」って思って、素通りする事たくさんあるよね?

 

上手い=良い、じゃない。

上手い=伝わる、でもない。

上手いは上手い、それだけ。それ止まり。

 

表現者として、それじゃダメなわけじゃん、絶対。伝えなきゃいけないわけじゃん、何かを。

それを彼女は持ってたんだよね。めちゃめちゃ伝わってきた。少なくとも俺には。

その時、「あ、これなんだなぁ」って、思った。

俺が目指してる表現者像、まさにこれだなぁって。

 

伝えること。上手いと思われることじゃない。

たしかに、上手かったら、いろんな人に見てもらえるかもしれない。

「上手いねぇ、すごいねぇ」って。

でも、それ心に届いてる?突き刺さってる?分かんないよね。

心にどんだけ突き刺さるかは、絶対に技術ではないんだよね。

心なんだと思う。

人間なんだと思うの。絶対。

 

だから表現に技術とかは関係ない。

 

もちろん、技術を全否定するわけじゃない。上手くなろうとするのは当たり前。努力するのも当たり前。

 

でも、その技術の向上が目的になっては絶対ダメなの。

「上手い」で終わっちゃう。そんな人はまじでゴマンといる。

 

むしろ今はみんな「上手い」を目指していて、「上手く」なきゃ人前に出ちゃいけないって思っている人もいるぐらいだから、世の中「上手い」で溢れてる。

だから、「上手い」だけじゃ感動しなくなっている。

 

「下手くそ」でオモテ出てみようよ。

目立つぜ。

罵倒されるぜ。

俺なんか未だに「全くわからなかった」って言われるぜ。

でもさ、伝わる人にはめっちゃ伝わる。気持ちが。必死さが。

 

何事も、技術は歴に比例する。

例外はもちろんあるけど、始めて1ヶ月の人と10年の人が同じステージに立ったら、10年の人の方が上手くて当たり前じゃん。

続けてれば、上手くなるのよ。

 

でも、そうじゃないじゃん。表現って。

100人いたら100人が、「上手いのは10年の方」って、言うかもしれないけど、じゃあどちらが感動しましたか?って聞かれたら、余裕振りまいて俺のが上手いぜってやってる10年よりも、ド緊張しながらもただ必死にやってる1ヶ月の方が票集めるかもしれないじゃん。

勝つことは難しいかもしれない。

でも、どちらが「上手い」かの質問よりは、絶対票は割れる。

0対100になることはない。

1対99になるかもしれない。

でも、その1がめちゃくちゃコアなファンになってくれたら、表現者としては勝ちでしょ?

 

ツイッターのフォロワー数日本最多の有吉弘行でさえ700万人。

日本全体で見たら、たった5.8%だよ。

 

そしたら、100人中99人には「下手だな」と一蹴されても、残りの1人をめちゃくそ感動させられたら、それで十分でしょ。

 

たぶん表現って、そういう細かい、細かい隙間に入っていくしかないのかなって思うのよね。

俺は16歳の少女に、そう思わされた。

 

あ、下手くそでもこんなに伝わるんだなぁって。(ごめんね、へたへた言って。でもあなたは今後、必ず上手くなるから)

 

「下手くそだから、実力がないから」って、ビビって人前で表現してこなかった自分を殴ってやりたくなった。

 

表現者として、俺らは伝えたい事があるんだから。

上手いとか下手とか関係なく、まず表現すべきだよ。

じゃないと、伝わるわけないんだから。

家で練習ばっかしてても、誰も感動させられない。

 

下手くそでも、伝わるものは伝わる。

俺はそれを伝えていきたい。

そして、続けていくうちに、勝手に上手くなるよ。練習・努力は当然必要だけど。

 

表現者なら表現すること。練習ばっかしてても、意味ないぜ。

人前に出よう!今日は以上だ!じゃあな!!

 

 

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