先日、こんなツイートをしました。
舞台稽古って、
— 路上役者 亮佑 (@ryosukekawai) 2020年1月13日
「本番でベストパフォーマンスをするための準備」だと思う。
でも、上手くなりたいなら、稽古とは別に
「基礎的な能力を上げるためのトレーニング」が必要だと思ってる。
他の役者さんがどんな練習をしてるのか、気になるなぁ。
誰か発信してる人いないかな。
お芝居の「一般的な練習」ってあまりないなぁと思うんですよね。
野球なら素振り、サッカーならリフティングのように、誰でも知っているような、
「上手くなるための基礎練習」みたいなのが、芝居にはない。
強いて言えば、発声・滑舌ぐらい。
でも、発声と滑舌だけをやっていても、芝居が上手くならないのは、明らかです。
だから、他の役者さんがどんな練習をして、上手くなったのか、すごく興味があるんですが、一流の役者さんは「自分はこれをして上手くなりましたね」みたいなこと、なかなか言わないですよね。
そこで今日は、僕が毎日しているお芝居の練習を赤裸々に書きます!
誰か1人にでも、参考になればいいなと思ったのと、人に聞きたいなら、まず自分が公開するのがいいなと思ったので!
〜目次〜
【メソード演技法】
まず前提として、僕は「メソード」(method)という演技法を参考にしています。
メソード演技(メソッド演技)は、ロシアの演出家であるスタニスラフスキーが確立した演技法です。
まずザックリ説明すると、メソードとは、
「舞台上で真実(リアリティ)を創り出す」
ことを目的にした演技法です。
【「舞台上で真実を創る」とは?】
具体的に、舞台上で真実(リアリティ)を創り出すとは、どういうことなのかというと、
例えば、
「部屋に一人でいて、リラックスしているシーン」があるとします。
本を読んでいたり、YouTubeを見ていたり、ただボーッとしていたり、何でもいいんですが、とにかくメソードが求めることは、「部屋に一人でいて、”本当に”リラックスする」こと。
メソードは、とにかく真実(リアリティ)を追求します。
実際に、部屋で一人でいるときは、誰でも無意識にリラックスしているでしょう。
しかし、それを「大勢に見られている舞台上」で再現することは、難しい。
練習でも本番でも、誰かに見られている中で、「本当に自分の部屋に一人でいるときと、全く同じレベルでリラックスする」ことはかなり難しいです。
でも、メソードが追求するのは、あくまでリアリティなので、
「本当に自分の部屋に一人でいるときと、全く同じレベルでリラックスする」ことを目指すのが、メソード演技です。
【芝居のどこに価値があるのか】
実際に体験したことを、舞台上で完全に再現するには、やはり技術が必要です。
誰でも毎日普通に歩いてるからといって、舞台上で誰でも普通に歩けるわけではないですからね。
だからこそ、「舞台上で真実を創り出す」ことが出来れば、それは特別な価値ある技術となり、芝居は芸術になり得る。
メソード演技は、そんな考え方を元に、「真実を創り出す」ことを目標にしています。
【メソード演技の基礎「五感の記憶」】
舞台上で真実を創り出すための練習として、メソード演技はいろんな練習法を提案していますが、
「これだけは絶対最初にやってね」と、ゴリ押ししているのが「五感の記憶」です。
具体的にどんな練習をするのかというと、
例えば、「エアーでコーヒーを飲む」という、パントマイムのようなことをやります。
見た目はパントマイムのようですが、実態はかなり違います。
パントマイムは、仕草や動きだけで、コーヒーを飲んでいることを「伝える」ことを目的にしますが、
五感の記憶は、五感を使って、「本当に飲む」ことを目的にします。
まず、いつも自分が使っているテーブルの上に、いつも自分が使っているカップを、思い浮かべます。
「ここにテーブルの縁があって、ここは年輪のような丸太柄になっていて…カップはここにヘリがあって、ここに取っ手があって、ここに白のドット柄があって、触るとこういう感覚がして、、」
次に、想像上のカップの取っ手に手をかけ、持ち上げます。
「いま腕のここの筋肉を使っていて、指のこことここでカップを支えていて…匂いと共に熱が伝わってきて、匂いはこんな感じで、、」
このように五感を使って、想像上でできる限り細かく、「本当にコーヒーを飲む」に近づけるように意識して行うのが「五感の記憶」という訓練です。
【その他の練習法】
五感の記憶の他にも、舞台上で意識的に感情を作り上げるための「感情の記憶」や、役者の大敵である緊張を和らげるための「リラックス」などが、メソードの練習法にはあります。
僕は、初舞台の後にこの演技法に出会いました。
当時、全く演技に自信がなかった僕は、完全に役者道の路頭に迷っていました。
「上手くなりたいけど、上手くなるにはどうしたらいいんだろう…」
そこでこの演技法に出会い、本の中でちょいちょい出てくる「ダメな役者の典型例」的な指摘が、僕に当てはまりすぎていたので、一目惚れしました。
これが正しいかどうかなんて分かんないけど、「無いものをあるように、あるものを無いように演じる」のが芝居だとすれば、
何年もこの練習を毎日続けて、少しは上達したかなと思います。
メソードは、1940年代に確立された古い演技法です。
なので、現代ではけっこう否定されている面もあります。
だけど、現在のいろいろな演技法がメソードの考えを元にしているのもまた、事実です。
僕は、この本に出会い、演技に対する考え方がガラッと変わったので、もしまだ読んでいなくて、気になる方は是非一度読んでみてください!
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